アレン短編「美容体操、毒ツタ、最終カット」2007年09月04日 06:26

「美容体操、毒ツタ、最終カット(CALISTHENICS, POISON IVY, FINAL CUT)」

息子がサマーキャンプで製作した映画に対し、映画会社から1600万ドルで配給料の申し出があるが、キャンプの経営者ヴァーニシュクから配給料の50%を要求する手紙が届く。主人公とヴァーニシュクは、不毛でナンセンスな書簡のやり取りをする。完成した映画はキャンプの講師の指導のおかげと主張するヴァーニシュクに対し、映画のアイデアは息子のもので、講師はいかさま揃いだったと反論する主人公。訴訟をにおわせつつ、ネガのオリジナルを握っているのは自分だと主張するヴァーニシュク。自分達の持っているプリントからでもネガは作れると強がる主人公に対し、早くしないとネガが破壊されると脅すヴァーニシュク。ついに主人公側は配給料の10%を提案する。するとヴァーニシュクはがらりと態度を変え、丁寧な手紙を書きつつ、20%につりあげようとする。

映画契約をめぐるハリウッド流の熾烈な交渉をパロディ化した短編。そもそも子供が製作した映画に映画会社が巨額の金額で配給契約を結ぼうとするあたりがナンセンスなのだが、互いに相手に罵詈雑言を投げかけつつ、主張すべきをきちんと主張するあたりは現実の映画界もかくやと思わせる。最後にようやく配給料の10%を手にしたヴァーニシュクが更にそれを20%に値上げしようとするしぶとさには脱帽。一連のやりとりには長年のパートナーだったジーン・ドゥマニアンに収益配分の訴訟を起こしたアレンの経験が盛り込まれていると見られる。

アレン短編「サム、ズボンの香りがきつすぎるよ」2007年09月04日 06:14

「サム、ズボンの香りがきつすぎるよ(SAM, YOU MADE THE PANTS TOO FRAGRANT)」

久しぶりに会った友人が着ていた奇妙な服。それは健康のための水分補給がいつでもできるよう、内側のタンクの水を胸ポケットからストローで吸えるという代物だった。興味を引かれた主人公はイギリスのセビル・ロウにあるその店へ行ってみる。英国英語ならではの大変にもったいぶった言い回しをする店員と珍妙なやり取りをしながら、主人公は様々な服を見せられる。食べ物をこぼしても一切しみのつかない服、情事用に一切においのつかない服、精神安定作用のある服など。主人公は、こするだけで携帯電話が充電できる服が気に入って買おうとするが、服を着たまま金属を触ったために感電して大爆発で飛ばされて重傷を負った客が何人もいることを知り、あわてて店を去る。

アレン短編「タンドーリの身代金」2007年09月01日 06:54

今年6月にウディ・アレンの短編集『単なるアナーキー(Mere Anarchy)』がランダムハウスから出版された。その中の短編を少しづつ紹介していきたい。

「タンドーリの身代金(TANDOORI RANSOM)」

ある売れない俳優が、有名俳優のスタンドイン(俳優の代わりに本番前のカメラや照明のテストを行う人物)として、ハリウッド映画のインド・ロケに参加する。ところが、彼は有名俳優と間違われて、身代金目的の犯人に誘拐されてしまう。誘拐犯はすぐに人違いに気づくが、それでも映画会社に身代金を要求する。しかし会社側はさっさと脚本を書き換え、ロケ隊は俳優を見捨てて別の地に移ってしまう。万事休すと思われたが、ランボー顔負けの救出劇によって、俳優は窮地を脱する。助けてくれた人物の正体を知って、俳優はびっくりする。それは彼にスタンドインの仕事を紹介したハリウッドのエージェントだったのだ。命をかけて救出してくれた理由を聞くとエージェント曰く、俳優を主役にした映画の仕事のオファーがあったから来たと言う。だが、その映画とはコロンビアの麻薬ギャングを扱ったアクション物で、ジャングルでの撮影が危険なために誰も出演したがらないものだった。それを耳にした俳優はすぐさま逃げ出し、俳優をやめる決意をするのだった。

アレン短編集『単なるアナーキー』 http://hajime.asablo.jp/blog/2007/01/09/1102158

アレンのバンド、2007年冬の欧州ツアー日程2007年09月01日 06:00

アレンの2007年冬の欧州ツアー日程でウィーンでの公演が追加された。


[2007/7/21記事] アレンが参加するエディ・デイヴィス・ニューオリンズ・バンドの07/12~08/1の欧州ツアーの日程が明らかになった。今年の特徴は年をまたいでツアーを行うこと。記念すべき08年の最初の日となる1/1は、現在新作を撮影中のバルセロナで公演を行う。

12/21 ブラッセル

12/22 ルクセンブルグ

12/23 ウィーン ←追加

12/25 パリ(公演2回)

12/27 ブダペスト

12/29 アテネ(公演2回)

12/31 リスボン

1/1 バルセロナ

1/2 サン・セバスチャン

1/3 ラ・コルナ

アレンの崇敬する巨匠ベルイマン死去2007年07月30日 19:55

『第七の封印』『野いちご』『沈黙』など数々の名作で知られるスウェーデンの映画監督イングマール・ベルイマンが死去したと7/30(月)のスウェーデンのメディアが報じた。89歳だった。アレンは人間の苦悩をシリアスに描いたベルイマンを深く崇敬しており、『インテリア』のようにその作風に影響を受けて作られた作品も少なくない。

月刊PLAYBOY9月号にアレンの短編2007年07月28日 06:01

7月下旬に発売された月刊PLAYBOY9月号に、アレンの短編『売文稼業(This Nib for Hire)』が掲載されている。ハリウッドの大物プロデューサーから映画のノベライゼーション執筆の依頼を受けた作家の悲喜劇を描いた作品で、アレンお得意の知性と皮肉の入り混じった喜劇短編。翻訳はアレンの戯曲『ウディ・アレンの浮気を終わらせる3つの方法』も訳した井上一馬氏。短編集『ぼくの副作用』『羽根むしられて』『これでおあいこ』以来、久々に日本で紹介されるアレンの短編となる。同作は6月に米国で発売されたアレンの短編集「狂気の防衛(Insanity Defense)」にも収録されている。

アレン、バルセロナでもカフェでクラリネット演奏2007年07月12日 06:41

映画撮影でニューヨークを離れている間、アレンはカフェ・カーライルでの月曜夜の演奏を休止している。しかし、バンドのエディ・デイヴィス(バンジョー)とコナル・フォウクス(ピアノ)が、6/19から8/18までバルセロナのカーサ・フスターのカフェ・ヴィーンズで演奏を開いており、アレンも参加しているという。デイヴィスは、アレンの参加を「立ち寄って参加した(dropping by to sit in)」と表現しており、もともと正式なスケジュールにはアレンは加えられていなかった可能性もある。

アレンの新作撮影風景(1)2007年07月12日 06:33

7/9から撮影が始まったアレンの新作撮影風景の写真がネットでも報道されている。写真はアメリカ人観光客に扮したスカーレット・ヨハンソンとアレン。