映画音楽『アラビアのロレンス』...モーリス・ジャールとデビッド・リーン2017年03月11日 07:09

 巨匠や名匠と呼ばれる映画監督には、決まった音楽家を多用し、音楽家の曲調がその監督の映画世界のトレードマークとなっている場合が少なからずある。ヒッチコックとバーナード・ハーマン、フェリーニとニノ・ロータ、トリュフォーとジョルジュ・ドリュリュー、スピルバーグとジョン・ウィリアムズ、黒澤明と佐藤勝などなどだ。その代表的な組み合わせとも言えるのが、巨匠デビッド・リーンとモーリス・ジャールである。二人の関係は、リーンの代表作『アラビアのロレンス』から始まり、以後のリーンの全作品---『ドクトル・ジバゴ』、『ライアンの娘』、そして遺作となった『インドへの道』まで続いた。作品数こそ少ないが、どれもリーンの壮大な世界観をジャールの音楽は見事に表している。

 中でも最も印象的な音楽はやはり『アラビアのロレンス』だろう。もともと別の作曲家が選ばれていたがリーンの気に入らず、当時かけ出しだったジャールに声がかかった。壮大な砂漠を背景にしたスペクタクルと主人公の内省を、アラビア風のメロディを交えて大オーケストラで見事に描き出した映画音楽の傑作である。ジャールは本作品でアカデミー作曲賞を受賞し、映画音楽界のトップ・スターとなった。ちなみに他のリーン作品『ドクトル・ジバゴ』と『インドへの道』でも同賞を受賞している。個人的には『ライアンの娘』もアイルランドの壮大な風景とラブロマンスを体現した美しい音楽で、受賞に値する名曲だと思う。『インドへの道』ではジャールは当初インド楽器を用いたインド風の音楽を構想していたが、リーンは「いつもの」大オーケストラによるスペクタクル曲を要望したという。

『アラビアのロレンス』「メインテーマ」

『ドクトル・ジバゴ』「ララのテーマ」

『ライアンの娘』「メインタイトル」

『インドへの道』「インドへの道」

映画音楽『ピンクパンサー2』...「夜の映画音楽」のテーマ曲2017年03月10日 19:40

 昔、1980年代にNHK-FMで土曜の晩に「夜の映画音楽(スクリーンミュージック)」という番組をやっていた。映画音楽評論家の関光男氏によるナレーションで、各回の特集に沿った映画音楽を10曲ほど流すのである。毎週土曜の夜になると、ラジカセをスタンバイして放送される音楽を一生懸命に録音したものだ。とても思い出深い番組で、録音したテープは今でも取ってある。オープニングとエンディングには静かで美しい音楽が使われており、後年それが「ピンクパンサー2」のテーマ曲だと知った。(アニメで流れるのとは別の曲である。念のため。)音楽はヘンリー・マンシーニ。この曲を選んだ関氏のセンスの良さが光っている。

『ピンクパンサー2』「偉大な贈り物」

 この曲には歌入りのバージョンもあって(というか、そちらが本家か)、こちらも番組のある回で放送されていた。タイトルは「偉大な贈り物(The Greatest Gift)」。どういうわけか、映画の中では歌の方は使われなかったようだが、なかなか素敵な歌である。

『ピンクパンサー2』「偉大な贈り物」(歌入り)

If you just could see yourself the way I do
You would see how wonderful you are
How can you know what love like yours can truly be
Because when I'm holding you
You're just holding me

When we part, the one you leave is me, not you
You don't know the loneliness I feel
The greatest gift that anyone could give to you
Would be for you, to see yourself
the way I do...

When we part, the one you leave is me, not you
You don't know the loneliness I feel
The greatest gift that anyone could give to you
Would be for you, to see yourself
the way I do...

もし私が見るようにあなたが自分を見ることができたなら
あなたがどれほど素晴らしい人か分かるでしょうに
あなたの愛が本当はどんなものかどうすれば分かるの
だって私があなたを抱きしめるとき
あなたは私をただ抱きしめるだけ

別れるときが来たら、去るのは私であなたじゃない
私が感じる寂しさをあなたは知らないでしょう
あなたへの最も大きな贈り物があるとしたら
私が見るように自分を見ることよ

別れるときが来たら、去るのは私であなたじゃない
私が感じる寂しさをあなたは知らないでしょう
あなたへの最も大きな贈り物があるとしたら
私が見るように自分を見ることよ

「マッシュ」主題歌 『自殺は苦しくない』2005年09月22日 05:09

映画: 「M*A*S*H(マッシュ)」 

曲名: Suicide is painless(『自殺は苦しくない』)

 朝鮮戦争時の野戦病院を舞台にしたロバート・アルトマン初期のヒット作「M*A*S*H(マッシュ)」の主題歌。冒頭のタイトルバックで山岳地帯を飛ぶヘリコプターを背景に流れる。ギターの弾き語りによる静かなバラード調で「自殺は苦しくないし、いろいろ気分転換になる。それにやるかやらないかは自分次第」というちょっと怖い内容の歌。一見自殺を肯定する歌詞だが、ベトナム戦争当時に自分ではどうにもならない状況下におかれた人間のささやかな抵抗の歌となっている。

 映画の大ヒットでアラン・アルダ主演によるテレビシリーズが作られ、人気が出て長寿番組となった。テレビ版でもこの音楽が主題曲として使われたが、テレビ向けに歌詞は除かれていた。アメリカでは今でもケーブルテレビで再放送されるほどの人気番組だが、ヒットの立役者だったアルトマンには、雇われ監督の悲しさで映画の監督料以外は何ももらえず、テレビ化の恩恵はまったくなかったという。

 ところで20年近く前に初めてビデオで見た時は、歌詞の"painless"を"paradise"だと思い、ずっとそう覚えてきた。今回、実は"painless"だったと知って、長年の理解が違っていたことに少々驚いた。でも"painless"より"paradise"の方が毒がきいていて面白いではないか。

 なお冒頭でヘリコプターが飛ぶ韓国の山岳地帯は、実はロサンゼルスの西方カマリロで撮影された。現在はこの場所のすぐ近くにカリフォルニア州立大学チャネルアイランズ校が設立されている。

Through early morning fog I see Visions of the things to be The pains that withheld for me I realize and I can see That suicide is painless It brings on many changes And I can take or leave it if I please

朝早くの霧ごしに僕は見た、 物事のあるべき姿を。 僕のために準備されている苦痛を。 このことは僕にも分かるし、理解できる。 自殺は苦しくない。 いろいろ気分転換にもなる。 それにやるかやらないかは自分次第。

The game of life is hard to play I'm gonna lose it anyway The losing card I'll someday lay So this is all I have to say Suicide is painless It brings on many changes And I can take or leave it if I please

人生はかなり大変なゲームだ。 どっちにせよ僕に勝ち目はない。 いつか負けのカードに賭ける羽目になる。 だから僕が言うべきことはこれだけだ。 自殺は苦しくない。 いろいろ気分転換にもなる。 それにやるかやらないかは自分次第。

The sword of time will pierce our skin It doesn't hurt when it begins But as it works its way on it The pain grows stronger watch it grin Suicide is painless It brings on many changes And I can take or leave it if I please

時という剣が僕らを突き刺す。 はじめのうち痛みはないが。 やがて時とともに効いてきて。 歯を食いしばっても痛みは強くなる。 自殺は苦しくない。 いろいろ気分転換にもなる。 それにやるかやらないかは自分次第。

A brave man once requested me To answer questions that are key Is it to be or not to be? And I replied "oh, why ask me?" Suicide is painless It brings on many changes And I can take or leave it if I please

ある時、勇者が僕に訊いた。 大切な質問に答えてほしい。 生きるべきか死ぬべきか、と。 僕は答えた「やれやれ、なぜ僕なんだ?」。 自殺は苦しくない。 いろいろ気分転換にもなる。 それにやるかやらないかは僕次第。

And you can do the same thing If you please

君だって、やるかやらないかは自分次第なんだ。

バーナード・ハーマンと『サイコ』2005年09月15日 06:34

バーナード・ハーマンは1911年6月30日にニューヨークで生まれた。CBSのラジオドラマの音楽を書いていた時に、ラジオでマーキュリー劇団のドラマをやっていたオーソン・ウェルズと知り合い、ウェルズに連れられてハリウッドへ来て『市民ケーン』の音楽を書いた。以来ハーマンは映画音楽を手がけるようになる。

ハーマンといえば、ヒッチコック作品の音楽で有名である。1955年の『ハリーの災難』から始まって、『間違えられた男』『知りすぎていた男』『めまい』『北北西に進路を取れ』『サイコ』『マーニー』まで、多くの作品で音楽を書いた。また音楽のない『鳥』ではサウンドコンサルタントとして、鳥の鳴き声を作り出している。

1960年の『サイコ』は1400万ドルもの興行収入をあげたヒッチコック最大のヒット作品である。(これは現在の価値に換算すると1億ドル以上になる。)ヒッチコックはこの作品を白黒で撮影し、テレビのスタッフを使って撮影を短期間で終わらせるなどして、わずか80万ドルの製作費で作り上げた。しかし音楽が入っていない粗編集の段階では仕上がりが気に入らず、1時間に短縮してテレビで放映することも考えたという。

ヒッチコックはハーマンに対し、モーテルの場面、特にジャネット・リーがシャワールームで殺されるシーンは音楽を入れないよう指示した。シャワーの音とナイフが刺される音、水が排水口に流れる音、そしてジャネット・リーの叫び声だけを使うというのがヒッチコックのアイデアだった。だがハーマンはこれに従わず、弦楽器のみを使ったサスペンスフルなスコアを書いてきた。そしてシャワーシーンを音楽なしの場合と音楽を付けた場合とでそれぞれ上映してみた。上映後、ヒッチコックは一も二もなく、ハーマンの音楽を使うことに決めたという。

残念ながらハーマンとヒッチコックの協力関係は、1966年の『引き裂かれたカーテン』で幕を閉じる。若い観客向けに新しい音楽を書くよう要求したヒッチコックはハーマンが書いたスコアを古臭いと感じ、2人は袂を分かつ。その後ハーマンはハリウッドを去り、英国へと移住する。

1975年にハーマンはマーチン・スコセッシ監督の『タクシードライバー』の音楽を担当するためにロサンゼルスへ来る。敬意を表したスピルバーグがスタジオに立ち寄って、その音楽を褒め称えるとハーマンは腹をたて「だったら君はどうしてジョン・ウィリアムズばかり使ってるんだ」と叫んだという。そしてハーマンは録音を終えた12月23日のクリスマスイブの夜、ホテルで就寝中に心臓発作で死去する。64歳だった。

『アニー・ホール』「イット・ハド・トゥ・ビー・ユー」2005年09月15日 05:47

『アニー・ホール』にはダイアン・キートンがクラブで歌うシーンが2回出てくるが、これはそのはじめのシーンで歌われた曲。初めてアレンが歌を聞きにきてくれたというのに、クラブは客のおしゃべりや皿の割れる音、電話のベルなどで騒がしい。すっかり気落ちしたキートンをアレンがなぐさめて、ふたりは初めてベッドインする。この曲は『カサブランカ』でもリックの店で賑やかに歌われているが、アレンジの違いで全然別の歌のように聞こえる。


It had to be you

It had to be you

I wandered around

And finally found

Somebody who

Could make me be true

Could make me be blue.

Or even be glad

Just to be sad

Thinking of you.


『カイロの紫のバラ』「チーク・トゥ・チーク」歌詞2005年09月15日 05:12

『カイロの紫のバラ』のタイトル部分と、ラストにはフレッド・アステア歌う「チーク・トゥ・チーク」が流れる。アステアとジンジャー・ロジャース共演のRKOミュージカル映画『トップ・ハット』で使われた曲で、二人のダンス・シーンも映画ではちらりと流される。スクリーンから抜け出したトム・バクスターは元の世界に戻り、一緒の生活を約束していた俳優には裏切られ、また不実な夫とのやるせない日々に戻るしかないセシリア。しかし、つらい現実に戻る前の彼女にひとときの安らぎを与えてくれるのが、大好きな映画だった。スクリーンで華麗なダンスを踊るアステアとロジャースを食い入るように見つめる彼女。一心に見ていれば、彼らが再びバクスターのようにスクリーンから出てくるのではないか。彼女のそんな願いが伝わってくるかのような、せつなく胸につまるエンディングだった。


Cheek to Cheek (Irving Berlin)

Fred Astaire


Heaven, I'm in Heaven,

And my heart beats so that I can hardly speak

And I seem to find the happiness I seek

When we're out together dancing, cheek to cheek.


Heaven, I'm in Heaven,

And the cares that hang around me thro' the week

Seem to vanish like a gambler's lucky streak

When we're out together dancing, cheek to cheek.


Oh! I love to climb a mountain,

And to reach the highest peak,

But it doesn't thrill me half as much

As dancing cheek to cheek.


Oh! I love to go out fishing

In a river or a creek,

But I don't enjoy it half as much

As dancing cheek to cheek.


Dance with me

I want my arm about you;

The charm about you

Will carry me thro' to Heaven


I'm in Heaven,

and my heart beats so that I can hardly speak;

And I seem to find the happiness I seek

When we're out together dancing cheek to cheek.


『アニー・ホール』「昔みたい」歌詞2005年07月03日 22:06

「昔みたい(Seems Like Old Times)」はジャズのスタンダードだが、『アニー・ホール』でダイアン・キートンがクラブで歌い、また映画のラスト・シーンでも非常に効果的に使われた。『アニー・ホール』のアカデミー作品賞は、ラストの回想シーンのモンタージュとこの歌で取ったといっても過言ではないほど、効果的だった歌。ダイアン・キートンの歌声は必ずしもうまくはないが、愛情と人生のせつなさや移ろいやすさを見事に表現している。


Seems Like Old Times (written by Carmen Lombardo and John Jacob Loeb)


Seems like old times, having you to walk with 

Seems like old times, having you to talk with

And it's still a thrill just to have my arms around you

Still the thrill that it was the day I found you


Seems like old times, dinner dates and flowers

Just like old times, staying up for hours

Making dreams come true, doing things we used to do

Seems like old times being here with you.


http://www.lyricsdepot.com/guy-lombardo/seems-like-old-times.html