「望郷 サンダカン八番娼館」2007年09月23日 06:44

「望郷 サンダカン八番娼館」をDVDで見る。熊井啓監督の代表作。よくできているし、力も入っている。田中絹代と高橋洋子の演技が素晴らしい。天草ロケも効果的な映像をもたらしている。ただ欲を言えば、これは原作の問題かもしれないが、主人公たちカラユキさんがなぜ日本に背を向けた墓標を立てるほど、日本を憎むに至ったか、そのへんの突込みがもう少し欲しかった。主人公への周囲の冷たさを、帰国した時の兄夫婦に集約していたが、主人公が「故郷に裏切られた」と感じるにはもう一押しあってもよかったと思う。現代の場面で、栗原小巻がジャーナリストと知った村人が大勢で田中絹代に詰め寄るシーンでは、村人の閉鎖性といやらしさをとことん描いていた。あのノリが回想シーンの方にもあればよかったと思う。

『ギルダ』2007年09月19日 06:16

DVDで『ギルダ』を見る。リタ・ヘイワースがヴァンプを演じて出世作となった作品。グレン・フォードがかつて結婚して離婚し、再会したヘイワースをなぜか執拗に拒み続ける。映画では明確に描かれていないが、フォードは同性愛者で、ヘイワースを(精神的にも肉体的にも)愛することができない。そしてフォードはヘイワースの今の夫である自分のボスへの愛情のために、彼女が奔放な行動を取るのを防ごうとする。一方でヘイワースは今でもフォードを愛しており、彼の気を引くためにわざと奔放な行動を取ろうとする。そうした奇妙な三角関係を軸に、ボスの秘密のビジネスとそれをめぐる殺人が絡む。おそらくフォードの同性愛は脚本ではもう少し明確に書かれていたと思うが、当然当時の映画界ではそれを描くことはできず、フォードが単にヘイワースの愛を拒み続けるようにしか見えない。作品としてはやや単調で起伏も少ないが、そうした作品の背景を考えると興味深い。リタ・ヘイワースはヴァンプ(妖婦)だが、心の底ではフォードを愛しているあたりが悪女ではなく善人のキャラクターとなっている。