アルバム「ウディ・アレン/スタンダップ・コミック」(スクリプトURL付)2005年07月02日 22:01

「ウディ・アレン/スタンダップ・コミック」は、1964年から1968年にかけてリリースされたスタンダップ・コメディアン時代のアレンの3枚のライブ・アルバム「ウディ・アレン」「ウディ・アレンVolume 2」「ウディ・アレン・サード・アルバム」から選りすぐって1枚のアルバムを再構成したものである。(この3枚は現在は販売されていない。)今と変わらないアレンの語り口で、二度の結婚生活(当時)のてん末から少年時代、NYの生活といったお馴染みのネタが抱腹絶倒のギャグ満載で語られる。アレンのコメディが好きな人は必聴。内容は、以下の通り。

(1)サンフランシスコ "ユージーンズ"のライブ(1968年8月):  ウォッカ広告、 ベガス、 二度目の結婚、 偉大なレナルド、 機械

(2)ワシントンDC "シャドウズ"のライブ(1965年4月): ムース、誘拐されて、 不幸な子供時代、 SF映画、 エッグス・ベネディクト、 経口避妊薬、 ヨーロッパ旅行、 失われた世代

(3)シカゴ "ミスター・ケリーズ"のライブ(1964年3月):  プライベート・ライフ、 ブルックリン、 軍隊、 ペット、 祖父、 我が結婚、 胸ポケットの弾丸、 NY大学、 ラブ・ストーリー、 警察、 南部、 まとめ

なお、この「ウディ・アレン/スタンダップ・コミック」の原文スクリプトは下記のサイトに掲載されている。アレンの英語は速口で分かりにくいため、彼が何を言ってるか細かいところまで知りたい人には嬉しいサイト。一見の価値あり。(このサイトでは他にグルーチョ・マルクスのアルバムのスクリプトなども掲載している。)

http://www.ibras.dk/comedy/allen.htm

英語は苦手という方は、拙著「e/mシリーズ・ウディ・アレン」(カルチュア・パブリシャーズ)でそれぞれのネタを日本語で紹介しているので、ぜひ参照してほしい。

http://www.ne.jp/asahi/t/hajime/book_woody.htm

『アニー・ホール』他スクリプト2005年07月02日 22:02

ネットで見つけた『アニー・ホール』と『ハンナとその姉妹』のスクリプト。完成した映画からト書きやセリフを起こしたトランスクリプトで、オリジナルではない。ちなみにアレンの映画は、製作中や撮影中に元の脚本から内容がどんどん変わるので有名。『ハンナとその姉妹』はオリジナルではアンハッピーエンドだった結末(ホリーと別れる)を、映画ではホリーが妊娠したという風に変更されたとのこと。

『アニー・ホール』http://www.allmoviescripts.com/scripts/11972272883f31caf5445e8.html

『ハンナとその姉妹』http://www.allmoviescripts.com/scripts/2542436883f4005f224a2e.html

*ついでにキューブリック作品のスクリプトも。

『シャイニング』http://www.allmoviescripts.com/scripts/13399927683f5ebe4e81672.html

『バリー・リンドン』http://www.allmoviescripts.com/scripts/8033348443f3285fd30d60.html

『時計仕掛けのオレンジ』http://www.allmoviescripts.com/scripts/4894455653f3435997531a.pdf

『2001年宇宙の旅』http://www.allmoviescripts.com/scripts/769675013f3183474e215.txt

『メリンダとメリンダ』評 【注意:ネタバレあり】2005年07月03日 22:05

7/2(土)夜、恵比寿ガーデン・シネマでウディ・アレンの『メリンダとメリンダ』19:15の回を見る。満員というほどではないが、中央のよい席はほぼ一杯。女性同志か、アベックが多い。白人女性もちらほら姿が見える。(恵比寿は外人の姿が多くなった。少なくともLAの日系スーパーミ○ワよりは多いと思う。)

メリンダという1人の女性を軸にした、コメディと悲劇の2つの物語が同時進行。話が混乱しないか心配したが、登場人物がメリンダ以外は全員別の人物であり、画面の質感もコメディは柔らかく、悲劇は固く、と多少変えてあるので、混乱せずすんだ。そもそも2つの物語で同じなのは核となる以下の部分のみで、細部の展開や人物設定は全然違う。

・田舎から出てきた女性メリンダが、NYのある夫妻のパーティに突然転がり込んでくる。 ・夫妻(又は友人)がメリンダにBFを紹介しようとする。 ・メリンダは紹介された相手とは別の相手(ピアニスト)を好きになる。 ・いろいろあって、最後にメリンダはピアニストと別れる。

意外なのは、メリンダが必ずしも物語の中心人物ではないこと。特にコメディでは中心になるのは、階下に引越してきたメリンダに恋するウィル・ファレル演じる売れない役者だ。アレンの分身とも言える神経症とドタバタぶりを発揮し、妻との関係にも悩む中年男の恋のおかしさを描く。悲劇バージョンでも前半こそメリンダを中心に話が進むが、メリンダが居候する親友の夫妻の亀裂も丹念に描き、やがてその親友がメリンダのBFと関係して破局のクライマックスを迎える。

アレンは「ひとつのアイデアをもとにコメディと悲劇の2つの物語を作り、何かを学べるか試してみた」と語っている。では観客にとって教訓的な映画かというと、そうではない。少なくとも映画が伝えようとしているのは「人生は同じものごとでも見方によって変わるのだから、明るい面だけ見て楽しく生きるべきだ」なんて、昨今ありがちな単純なメッセージではない。

劇中で、2人の作家がひとつの話から、喜劇と悲劇それぞれの物語を組みたててみせるが、2人ともアレンの分身なのだ。喜劇も悲劇もともに人生の真実であり、どう生きようが、最後に人間は死ぬ。目に見えて確認できるものだけが確かな存在であり、生きているうちだけが華なのだという最後の作家の主張こそアレンの哲学である。2つの物語を並べること自体は、同じアイデアからでもいろいろな物語を創造できるのだということをアレン自身が芸術家として立証してみせたということで、それ以上の意味はない。

コメディ版は楽しめるが、やや深みに欠け、アレンも出てこないのでTVコメディの域に留まっている。悲劇版には魅力的な人物があまり出てこない。唯一、夫との不仲関係に苦しむうちに、メリンダのBFのやさしさに救いを見出し、彼と深い関係になっていくクロエ・セヴィニーが見る者の共感を呼ぶくらいだろう。

登場人物の誰にもアレンが深く肩入れせず、客観的に見ているという点では黒澤明晩年の「乱」に通じるものがある。「乱」は「人間の愚かしさを天からの視点で見る」ことで人間の愚かしさを浮かび上がらせようという黒澤のペシミスティックな作品で、それまでの黒澤作品と異なって登場人物は自らの手で運命を切り開くというよりは愚かしさと運命に翻弄されるばかりである。それらを通じて、人間の愚かしさが浮き彫りになるのだ。『メリンダ』でも、アレンが一番伝えたかったのは、2つのメリンダの物語そのものではなく、「コミカルな人生も、悲劇的な人生もやがて必ず終わる(=人は必ず死ぬ)」というアレン十八番のメッセージだ。そのメッセージをこれまでのように物語そのものに組み込むのではなく、「『作家が創造した虚構の物語』という語り口の構造を利用して観客に訴える」ことが本作の最大のミソであり、アレンが同じメッセージを再び取り上げた所以である。

あと、どう言うわけか、はじめ字幕の内容が全然、頭に入ってこなくて混乱した。哲学者とか不条理とかいう単語がうまく消化できず、意味が伝わってこないのだ。歳をとったせいかもしれないけど、そう感じたのは僕だけだろうか。

『アニー・ホール』「昔みたい」歌詞2005年07月03日 22:06

「昔みたい(Seems Like Old Times)」はジャズのスタンダードだが、『アニー・ホール』でダイアン・キートンがクラブで歌い、また映画のラスト・シーンでも非常に効果的に使われた。『アニー・ホール』のアカデミー作品賞は、ラストの回想シーンのモンタージュとこの歌で取ったといっても過言ではないほど、効果的だった歌。ダイアン・キートンの歌声は必ずしもうまくはないが、愛情と人生のせつなさや移ろいやすさを見事に表現している。


Seems Like Old Times (written by Carmen Lombardo and John Jacob Loeb)


Seems like old times, having you to walk with 

Seems like old times, having you to talk with

And it's still a thrill just to have my arms around you

Still the thrill that it was the day I found you


Seems like old times, dinner dates and flowers

Just like old times, staying up for hours

Making dreams come true, doing things we used to do

Seems like old times being here with you.


http://www.lyricsdepot.com/guy-lombardo/seems-like-old-times.html

ミア・ファロウ、ポランスキー監督の為にロンドンで証言へ2005年07月05日 22:09

ミア・ファロウ、ポランスキー監督の為にロンドンで証言へ アレンの長年のパートナーながら、スンイー事件以来アレンと袂を分かったミア・ファロウの近況だが、ロマン・ポランスキー監督の為に7月中にロンドンの裁判所で証言する見込みだ。

ポランスキー監督は35年前にカリフォルニア州ベル・エアの自宅で、妊娠8ヶ月の妻シャロン・テートをチャールズ・マンソンの一味に殺されている。ヴァニティ・フェア誌は、外国から彼女の葬儀に向かう途中のポランスキーが、ニューヨークのエレインズ(アレンの馴染みのレストラン)で見知らぬスェーデン人の女性を誘惑したと報じていた。これに怒った監督は、同誌の発行人コンド・ナストに対する名誉毀損の訴えをロンドンの裁判所で起こしており、ファロウは今月中にも監督の為にロンドンで証言するという。ポランスキーが女性を誘惑したとされる時にファロウも一緒にエレインズにおり、その時の様子を97年に出版した自伝にも書いているという。

ファロウはポランスキー監督の1968年のホラー映画『ローズマリーの赤ちゃん』で脚光を浴び、スターになった。

ポランスキー自身は1978年にアメリカで起こした少女暴行事件のため、ロンドンに行くと逮捕される可能性があることから、今回の裁判ではビデオによる証拠提出を行うという。にも関わらずロンドンで裁判を起こす理由だが、英国の法律は名誉毀損に対して厳しいためだという。

http://washingtontimes.com/upi/20050703-125605-1301r.htm

http://www.timesonline.co.uk/article/0,,2087-1678578,00.html

ロンドン爆弾テロと撮影中のウディ・アレン作品への影響2005年07月08日 22:09

アレンが新作の撮影を行っているロンドンで、7/7(木)朝に大規模な同時多発テロが発生。アレンの新作はアーリング・スタジオで撮影しており、今週はオックスフォードシャイアでロケを行っているため、幸いにも今のところアレンの製作には影響はなさそう。。

http://www.cinematical.com/2005/07/07/attacks-throw-wrench-into-londons-entertainment-sector/

アレン関連サイト紹介 woodyallen.com2005年07月12日 22:11

アレンの名前がURLのサイトだが、フィルモグラフィも映画やビデオのポスターで代用し(それはそれで面白いが)、戯曲リストも「セントラル・パークウェスト」で止まるなど、内容がやや古くて中身に欠ける。見るに値するのは以下くらいか。

・アレンが出演した69年のテレビ番組『ウディ・アレン・TVスペシャル』の紹介。キャンディス・バーゲンとのショート・コメディなどをセリフも交えて解説しており、一読の価値あり。

・アレンの出たウォッカ広告(上に掲載した写真。スタンダップ・コミックのネタになった。)

・アレン・インタビュー(『おいしい生活』の日本語パンフレットに載っているものと同じ)

・『SEXのすべて』のシナリオの一部抜粋(射精直前の体内を描いたエピソード。内容は映画版とほぼ同じ)

http://www.woodyallen.com/

ロンドン同時テロへのスカーレット・ヨハンソンのコメント2005年07月12日 22:11

アレンの新作(タイトル未定)をロンドンで撮影中の女優スカーレット・ヨハンソンが、新作『アイランド』のプロモーションで米国に一時帰国中にロンドン同時テロについて語ったコメントが Contactmusic.com に載っている。 「ロンドンは素敵な場所だし、他の場所と同じように安全よ。とにかくショー・マスト・ゴー・オンね。今週は撮影はセントラル・ロンドンで行われてるわ。最後までずっとそこで撮影するの。もちろん私もそこに行くのよ。9/11の時もここニューヨークにいたけど、人々の団結は驚きだったわね。警察と消防の人々も素晴らしかったわ。ロンドンでも同じことね。対応がとても素早くて、そのことだけ見ても問題ないと感じるわ。どこにいてもテロの危険はあるけど、だからといって人生を変えちゃだめなのよ」 と、アレンの口からは絶対に聞けないような実にポリティカリー・コレクトなコメントである。彼女は今週後半からロンドンでの撮影に復帰する予定とのこと。今のところ、ロンドン同時テロに対するアレンのコメントは発表されていない。

http://www.contactmusic.com/new/xmlfeed.nsf/mndwebpages/brave%20johansson%20insists%20the%20show%20must%20go%20on%20despite%20bombings

アレンのコメディの師、ダニー・サイモン死去2005年07月29日 22:13

ニール・サイモンの兄でコメディ作家のダニー・サイモンがオレゴン州ポートランドで脳卒中のため死去した。享年86歳。1940年代にラジオの番組作家になり、その後、弟のニール・サイモンと組んでTV番組を書いたりした。1955年にNBCの新しいコメディ番組の主任作家だったダニー・サイモンは、無名の新人だったアレンを作家チームに抜擢。アレンは仕事のためにロサンゼルスへ移ってサイモンと働き、半年後に番組が打ち切られてニューヨークへ帰ってからも、サイモンとの関係は続いた。アレンは「コメディについては、すべてダニー・サイモンから学んだ」とインタビューで語っている。

http://www.contactmusic.com/new/xmlfeed.nsf/mndwebpages/comedy%20legend%20danny%20simon%20dies%20at%2086